「文昇問題 其の一」

鍋奉行

 

鍋奉行が威張る季節になった。各家庭で「鍋なら○○やで!」というのがあると思うが、いずれにしてもひとつの鍋を囲んでの食事というのはいいものだ。
うちの子どもなどは「今日は鍋やで」と言うと、大喜びだ。何が好きか? だしをとった後の昆布が大人気、いつも家族で取り合いになる。
今まではだしを取った昆布を捨てていたが、それだけではもったいないと思っていた矢先、TVで"昆布温泉"を紹介していた。その地の名産の昆布を頭や肩に乗せて、皆が温泉に浸かっている。それをすると肌がすべすべになると評判で、観光客も増えたそうだ。これだと、私は直感した。グルメ噺家のFさんなどは、だしを取った昆布で佃煮を作るそうだ。自分で作るので、添加物も入ってないし店で買うのよりよっぽどうまいと、豪語していた。しかし、私も妻もずぼらなので、昆布を焦がさないようにコンロの前でじっとしていられない。性に合わない。我が家では絶対に、"昆布風呂"だ。
利尻産の昆布を手に子ども達が風呂に入った。次に私が入り、子どもがどこをこすったかわからない昆布を顔から肩、背中、・・と滑らすと、肌がすべすべになった気がする。
でも、湯船に昆布と浸かっていると、自分がエノキだけになった気分だ。次は湯船で、雑炊でも作ったろうかな!
                               <2003・12月>