「文昇問題 其の一」
解禁日の段 |
昨年の11月16日のことだ。この日は11月の第3水曜日だ。お酒好きな方は、お気付きだろうが、翌日はボジョレー・ヌーヴォの解禁日だ。この日に、酒屋の2階で催されている落語会に出していただいた。毎年、解禁日の前日に落語会をして、酒屋のご主人が、ワインの宣伝をする。お客さんもそれを承知で、会の後、購入して世界に先駆けて、ボジョレーを楽しむそうだ。
また、その日は、会場の暖房をつけると暑く、クーラーをつけると寒いという日だった。結局のところ、どちらもつけなかった。会の方は、自画自賛だと言われるかもしれないが、盛況のうちに終わり、いよいよご主人が登場し、ワインの注文を取ろうとした時、お客さんの一人が倒れた。我々の熱演に興奮したのか、はたまた、のぼせたのか、とにかく倒れた。他のお客さん達は窓を開けたり、煽いであげたりと介抱していた。呆然と佇むご主人。救急車を待つ間、注文を取るのは不謹慎だし、お客さんの方も注文する雰囲気ではない。そのおじさんは大丈夫と言うが、あきらかに顔色が悪い。緊迫の中、救急車が到着した。そこで一言、担架で運ばれながら、「ワイン2本くれ」と、その方が注文してくれていたら、すべて上手くいっていただろうに。
買いたかったのに買えなかったお客さん、たくさん仕入れたのに売れなかったご主人、そして倒れてしまったおじさん、三方一両損ならぬ、ボジョレー損でした。皆さんも倒れる時には、くれぐれも気を走らせて、倒れていただきますように。いや、それよりもまず、倒れないように。
<2011・12月>