「文昇問題 其の一」

零点の段

 

 娘がこの春から、社会人になった。「大学に行ってまで、勉強やりたくないから」と、高校を卒業しての就職だ。分数の計算もできない大学生もいるようなご時世、私は常々「遊びに行かす為に、大学にやらせる金はない」と、子ども達にきっぱりと言っていた。親孝行な娘だ。確かに、あまり勉強は好きではないようで、学生の時に、テストで零点を取ったことがあるみたいだ。その隠していた答案用紙が、大掃除で出てきたのだ。学校や先生、その他、諸々の不条理への抗議の意味で、わざと白紙で出し、零点というのはあるだろう。または、答えは合っているのに、名前を書き忘れてしまい、残念ながら、零点ということもあるだろう。娘は、社会に反発したわけでもなく、名前もちゃんと忘れずに書き、適度に解答しての零点だった。そういう例は、私の知る限り、ドラえもんの中の、のび太くらいだ。ただし、娘の名誉の為、これは小テストだったそうだが。
 この様なことを文字にしてしまった私は、父として零点だろうか。



                                          <2012年 春>