「文昇問題 其の一」

冷蔵庫の段

 

 ついに冷蔵庫を買った。といっても、今まで無かったのではない。結婚祝いに、叔父さんから戴いた物を22年間、使い続けていたのだ。当時は、最新だったと思う。今では当たり前かもしれないが、タンクに水を入れておくと、勝手に氷を作る機能があった。それが、数年前から、こちらに何の断りもなしに、勝手に氷を作らなくなってしまった。また、冷凍庫からは、冷気が漏れ出し、冷凍食品が解け出した。
何軒か電気屋へ行き、冷蔵庫を見ていると、決まってこういうやり取りになる。
店員:「新しいのをお探しですか?」
私 :「はい。今使っているのが、古くなって」
店員:「10年くらい前の物ですか?」
私 :「いいえ」
店員:「15年前?」
私 :「22年前です」
店員:「・・・」
暫しの沈黙の後、意を決した店員に、こう言われる。
「それは、電気代が15倍くらいかかってますよ。それまでの電気代で、新しいの買えてましたね」と。電気代の真偽はわからないが、置くスペースや価格を考慮し、ついに買った。
楽しみに待っていると、後日、配送されて来た。しかし、玄関に物が多過ぎて、家の中に入らなかった。私は仕事があり、下駄箱等を動かす時間がないのに、妻がゴチャゴチャと言ってくるので、大ゲンカになってしまった。
新しい冷蔵庫は、よく冷えるようになったが、夫婦間はもっと冷えた。



                                          <2012年 10月>