「文昇問題 其の一」

顔認証の段

 

  数年前にノートパソコンを買った。そのPCには、顔認証システムがあり、登録した私の顔を見せると、起動する。初期のソフトでは、精度が悪かったのか、子どもが私の顔を真似ると、2割位の確率でログインできた。それを見て、妻も試してみたが、さすがに、それは無理だった。子どもには私のDNAが、混じっている様で、少し安心した。
  ところが、何度かバージョンアップしていく内に、今では、私以外の者が、いくらPCに愛想を振りまいても、ログインさせてもらえなくなった。たまに当人でさえ、ダメな時がある。寝起きで顔が変形しているのか、それとも、加齢による顔の変化にシステムがついて来れないのだろうか、あるいは、睡眠中に家族の誰かに顔面を殴打されているのではないか。便利なようで、不便なものだ。機械に使われないように、生きていきたい。
そして、なにより、皆様に顔を覚えていただける噺家になりたいものだ。       

                       
                                        <2015年 7月>