「3年6組 上国料浩」

平成十年十月発行 会報第六号より

 

僕の姓名は『上国料 浩』です。『かみこくりょう ひろし』と、読みます。一つ一つの字は、読むことが出来るのに、全部並ぶと読めない人が多いです。『うえくにりょうこう』と読んだ人もいます。どこで切るねんと、心の中で叫びました。

だから僕は、学年が変わる時が嫌いです。初めての先生が、出欠を取る時に、絶対に僕の所で止まるのです。出席簿というのは、五十音順のはずです。前が岡田君で、後ろが川下君。『オ』と『カワ』の間だから、『上』を『ウエ』と読むのはおかしい。『カミ』と読む事が推測できる。しかし、大体の先生は、「うえ、くに、…、これなんて読むの?」と尋ねる。そんな時決まって僕は、「かみこくりょうです。」と答える。他の人は、「○○君」「ハイ」なのに、僕だけ返事は、「かみこくりょうです。」

でも、一発で読んだ人が一人だけいました。教育実習で来た大学生の人です。出欠を順にとって、僕の番でしばらくの沈黙。クラスのみんなは、またいつもの事かと言う顔。ところが、その教育実習生の先生は、五十音順に並んでいるという事から推理して、「う〜ん、君は、かみこくりょう君やろ」。クラスメートは全員拍手。僕は、丁寧に立礼した。出欠を取っただけで、クラスはひとつになった。この人は、いい先生になるだろう。

とにかく、僕は新学年になった時が大嫌いです。

PS.この教育実習生が、先生になられたのかどうかは存じませんが、先生になっていなくても、いい探偵になっている事でしょう。

(桂 小國改め桂文昇)