つれづれぐさ

「連々草」

平成九年四月発行 会報第四号より

 

多くの大学で、受験の注意事項の中に『試験会場では携帯電話やポケベルの電源を切る事』というのが、新たに加わったそうだ。それだけ携帯電話やポケベルが普及した、そしてマナーの悪い持ち主が多いという事だろう。よく電車の中で、長々と携帯電話で話している人を見かける。先方からかかってくるならまだしも、こっちからわざわざかける奴がいる。急用なら仕方ないが、駅に着いてからでもええやんというのが多い。まわりの人を気にするでもなし、自分の部屋に居てるようだ。そのうち車内で着替えをするに違いない。

私は携帯電話を持っていません。桂文枝の直弟子が20人、その内携帯電話を持っていないのが2人。すごい普及率だ。でも普及し過ぎて困る事もある。一門で集まった時に、誰かの携帯電話が鳴った。皆、服のポケットや鞄をガサガサ。持っていない私まで、「オレのんかな」と。

私は携帯電話が嫌いだ。こちらからかけるのはいいが、かかってくるのが大嫌いだ。いつでもかけられる便利さよりも、いつでもかかってくる不便さを感じる。いつどこに居ても、軍事衛生で監視されている感じがする。(オレはフセインか!)

ある噺家の家へ電話をしたら、留守番電話になっていて、「お急ぎの方は携帯電話まで」とメッセージが入っていた。急いでいたので、携帯電話にかけたら、「留守番電話サービスです。メッセージをどうぞ。」…悔しい。私は通話料金の安い自宅へもう一度電話して、「携帯の役目果たしてないやないか!」と思わず叫んでいた。

今自宅に電話が無い所が珍しい様に、携帯電話を持っていない人が、珍しくなるだろう。たとえ1億2千万人が持とうとも、私は絶対に持たない。

 

  ここに私は

   “携帯電話の非携帯”

      を宣言いたします。

   もし、持ってたら、堪忍な。

(桂 小國)