つれづれぐさ

「連々草」

平成十年四月発行 会報第五号より

 

私は、漫才師今いくよ・くるよの師匠だ!

去年の正月に、吉本興業から電話がかかってきました。内容は、「素人名人会の特別番組で、いくよ・くるよが『二人三番叟』を踊るので、二人に教えてくれ。」というものでした。

私は日本舞踊を稽古して6年程。その私に教えてくれとは…。また、名人会といえば、西川きよしさんが司会で、審査員席には私の師匠桂文枝を始め、いろいろな分野の先生方が並んでおられる。その中に、日舞の山村楽正師匠もいらっしゃる。最初私は、難色を示しました。すると、吉本らしい答えが、「楽正師匠に稽古をつけてもらうと、舞踊家としての顔があるので、妥協しない。時間もないし、適当でええねん。」

それなら、引き受けるか。しかし、いくよ・くるよさんは、芸人として、また年齢も私よりはるかに先輩。それに二人とも、踊りの下地もない。そんな人に私が教えられるのか。私は悩んだ末、ギャラがもらえるというので、稽古をつける事にしました。

1時間程の稽古を2度しただけ。「これで大丈夫かな。」と思ったが、もう本番当日。お客さんで満員のNGKの舞台に、いくよ・くるよさんが登場。結果は、名人賞どころか、敢闘賞もダメ。悲しい鐘の音が響く。審査員の先生方から、「誰に稽古つけてもらいなはったん?」「小國ちゃんです。」そこで文枝師匠が「小國の弟子でっか。ほな、名人賞あきまへんわ。」(どういうこっちゃ)

しかし、その文枝師匠から、先日踊りの仕事を頂きました。師匠と同じ舞台で踊らせてもらったのです。ちょっとは認めてくれたのでしょうか。

(桂 小國)